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第七十三回 198X年12月26日 (最終回)
ようやく掃除が終わった頃には、もう明け方近くになっていた。
ダッフルコートを着て、外に出た。 空腹のせいで、少しも眠くなかったからだ。
まだ夜は明けていない。 風がとても冷たくて、身体の底から冷えてくるのを感じた。
風の音の他に聞こえるのは、僕の足音だけだった。 

ポケットに手を入れると、さっき掃除の途中で入れたヨウの絵葉書紙が手の甲に触れた。 
煙草屋の角を曲がったところでポストを見つけたので、それを取り出し、街灯の明かりに照らして、もう一度読んだ。 
文面はたったこれだけだった。

「ユウスケさん、元気?
 私はとても元気です。   ヨウ」

僕は、僕に宛てられたその絵葉書をヨウの代わりに投函した。 

それから僕は、ゴミの集積場に行った。
自転車の部品を探すつもりだったが、堆く積まれているゴミの山を見て気が変わり、集積場を去った。
あの壊れた自転車は、壊れたままでいいと思ったからだ。
歩きながら、僕はあの自転車に、必死になって乗ろうとしたヨウの姿を想像した。 あの事故に遭った時から、きっとヨウは、こうする事に決めていたんだろうと考えた。

ゴミヤーズのグラウンドに着いた。
目を閉じて、何か楽しかった時の事を思い出そうとしたが、何も浮かんではこなかった。 「そんなものはもうないんだよ」と、カツミがすまなさそうに笑っている気がした。
風の音がびゅうびゅうとして、微かに乾いた草の匂いがした。 
コートのポケットに両手を入れたまま、僕はグラウンドの闇に向かって一歩踏み出した。 
サクッと音がして、靴の下の砂が僅かに転がるのを感じた。 

まるで、世界の果てに、たった一人取り残されたような気分だった。

サクッ、サクッとさらに音を立てて僕はさらに進んだ。 
歩きながら僕はコートからポケットを出し、そして大声を出した。 喉が千切れるかと思うくらいの声だ。 コートを置き、グラウンドを走った。 しかし、いくら走っても気持ちは収まらない。 風の音を聞きながら、全力で走りつづけた。 走りながらまた大声を出した。 とにかくめくらめっぽうに走った。 息が上がり、喉がヒリヒリと痛む。 肺が破裂しそうに膨らみ、心臓が飛び出すほど強く胸を打つ。 身体が軋み、脚が捻れそうになる。 それでも、僕は何度も大声を上げた。 

突然、ボゴッと音がして、下腹部に激痛が走った。
一瞬、息が詰まり、僕はグラウンドに倒れこんで、そのまま気が遠くなった。
薄れてゆく意識の中で、僕はカツミのことを考えていた。 それはかつて誰よりも速くグラウンドを駆けたカツミではなく、また松葉杖をついたカツミでもなく、あの日、傘をさしてひとりで雨の中を歩いてきたカツミだった。 カツミとヨウと一緒に居たとき、僕は楽しかったんだ、ということを理解した。

「おい、大丈夫か?」
目を開けると、広志さんと五郎さんがしゃがんで僕を覗き込んでいた。
「痛かったろ、五郎さんがよぉ、急にボール投げるからさぁ…ひっでぇよな…」
広志さんの顔が超アップだ。
「…だってよぉ…暗いとこで、変な奴が変な声出してるしよぉ…怖えじゃねぇか…」
ちょっと離れて、ボールを持った五郎さんがぼそぼそ喋っている。

僕はよろけながら立ち上がった。
…大丈夫?…大丈夫です…というようなやりとりの後、…じゃあ、そろそろ…と言いながら、広志さんと五郎さんも立ち上がって歩き始めた。 2,3歩あるいてから、広志さんがこっちを向いて僕に尋ねた。
「まだ、走れる?」

ヂリン、とヨウのベルが鳴った気がした。

先に走り始めた作業着姿の広志さんの後について、僕は走りはじめた。 
サクサクサクと広志さんのスニーカーの足音と、ザッザッザッザッと僕のスニーカーの足音が響く。 踏み出すたびに広志さんの頭が揺れ、僕の視界が揺れる。 広志さんの口元から、白い息が規則的に吐き出され、それと重なるように僕の呼吸する音がする。 そのうちに、足音と白い息以外の何も頭に入らなくなる。 暫くすると、前を走る広志さんの輪郭が少しずつくっきりとしはじめる。 霜の降りた足元の草が、うっすらと白く輝いている。 

五郎さんはやっぱり走らない。 
少し離れた場所で、身体をひねったり伸ばしたりするだけだ。 五郎さんの近くを横切ったときに、口笛の音が聞こえた。
「…本当は、全部が、すぐそばに流れてるの…」 ラジオを聞きながらヨウが言った言葉を思い出した。
小野さんが、あの家で掃除をし、丁寧に雑誌を積み上げる姿が頭に浮かんだ。 それから、香子さんが僕の知らない町で馴れない靴を履いてよろけながら歩く姿が浮かんだ。 

左手の空を見ると、夜が明け始めていた。 蒼い色が薄まるにつれて、そこに少しずつオレンジが混じり、その光が雲の形をくっきりと浮かび上がらせる。 
「…聞こえるか…カツミ…」 
ヂリン、ヂリン、ヂリン…僕たちの足音に合わせてベルは鳴り続ける。

…あの空を見て、ヨウは何と言うだろう…と思った。 
きっと、聞いても簡単には教えてくれないだろうな、と思うと、急に笑いがこみあげてきた。


Fin
| 西岡宏輝 | 11:42 | comments(12) | - | pookmark |
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Comment
オフィスの皆さん、高橋大さん、最後まで更新してくださってありがとうございます。
とても感謝しています。
このブログを通じて最初に発見したのは、自分の「恥ずかしいくらいの自意識」です。
そういう自意識とはもう自分は無関係だろうと思っていたので、この発見と、それを自覚した時のうろたえぶりは情けないくらいに新鮮でした。
アップされた小説をちょっと読んでは、きっとこんなの面白くないだろう…とかすぐに思い、あまりの恥ずかしさに耐えられずに、高橋さんに何度もムリを言って、アソコもココも直させて欲しい、と次々に書き直しをさせてもらったのですが、そのうちに自分でも知らないうちにプスプスとエンジンが掛かり始めたんだろうと思います。
工場の描写とか、銭湯の風景とか、自分のノレる話を無意味に差し入れていくうちに、だんだん(多分いい意味で)小説の出来なんてどうでも良くなってきて、まぁ稚拙でも何でも、何か作っている間は、とりあえず僕は大丈夫なんだろうなぁ…ということが分かってきた。
そんなことは誰にとってもどうでもいい事だろうと思うのですが、僕の日常生活においてはまさに大発見だったのです。
ですから、そういう意味で、読んでくださった方も含めて、ここまで付き合ってくださった皆さんに、ありがとう、ということなのです。
Posted by: 西岡 |at: 2008/07/24 12:05 AM
ありがとう!にしおかさん!
Posted by: 読者 |at: 2008/08/01 12:11 AM

相手の女がテクニシャンすぎて即イキしちゃったわwwww
でも一回は一回だからな! キッチリ諭吉いただきましたwww
てか女も「かわいい」って笑ってたし、別に俺は悪くないよなー?
Posted by: ピュワァーっっっっちゅwwww |at: 2009/05/08 10:05 PM

調子ノってGW中に毎日セクりまくったら超腰イテーwwwww
まぁおかげで一気に50万貯まったけどな(^-^)v
バイク買ってマッサージ行ったらしばらく休憩するわーw
Posted by: もう無理www |at: 2009/05/11 5:24 PM

世間は不況で騒がしいけど、はっきり言って俺には無縁だねw
ち ん こ触らせてあげて顔にぶっかけてあげるだけで5万貰えるしw
いやー世の中チョロイっすわwwwwwww
Posted by: ち んち んは不景気知らず |at: 2009/06/28 8:34 AM
おは★
素敵なサイトでした。
Posted by: mixi |at: 2009/10/02 2:13 PM


ちょw ここに元カノがいるんだけど(´vωv`;)
一発セクったら3万出すとか何だよぉお!!!!!!
こんな金持ってんだったら別れなきゃ良かった・・・(´Д`)
Posted by: やっちまったなぁ! |at: 2010/01/17 9:15 PM

まさかオ ナ ホをあんな風に使ってくるとは思って無かったぞ( ̄0 ̄)w

一日経ってもまだ下半身ヒクヒクしてるし(;´▽`A
Posted by: 王様扱いウマーw |at: 2010/02/03 7:53 PM


オレの祖 チ ンがまさかの大活躍だぞ!!!
お姉さんに祖 チ ンもてあそばれて5万貰えて
俺もうtw;おいいhそあぁ最高!!!!!
Posted by: なんぞコレぇぇえぇ!!!! |at: 2010/02/09 3:10 PM

チ ン ポ食われてんじゃね!?ってぐらいスゴイ締めつけ!!
もー気持ちよすぎて何回出したか分かんねwwwww(^^;)

しかもこんな極上のマ ヌ コ味わって7万もらったし!
最近の女の子どうなってんのマジでwwwwww
http://6imln4v.tida.psyrents.net/
Posted by: まなぶ |at: 2010/07/15 1:19 AM

Hしてお金もらえるって最高だな!!!!
ぶっちゃけテキトーにやっても月30万越えとか余裕だし(笑)

もう仕事辞めて、これ一本で食ってくわ!!!!(* ̄ー ̄)v
http://uu7fuq1.noah.topemope.net/
Posted by: 底辺ドカタ |at: 2010/10/03 9:26 PM

うほぉぉぉぉぉぉ!!なんじゃコリャァァァァ!!!!!

エロいお姉さんにめちゃめちゃイかされてぇぇぇぇっ!!!

10万もらったぁぁぁぁぁぁぁ━━━━(゚∀゚≡゚∀゚)━━━ってばよ!!!!

http://s52yshh.takenoko.asagi.me/s52yshh/
Posted by: タランチュラ |at: 2011/06/12 7:03 AM








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